鑑別書に関連して起こりうるトラブル(実体験)その4

ピンクオレンジのサファイアの写真

石が本物かどうかを確かめたり、石に対して行われている人為的処理を明らかにするために、「鑑別」という手段があることをこれまでに紹介してきました。
その中で、鑑別は信頼できる鑑別機関に依頼することが重要だと繰り返し述べてきましたが、それには理由があります。
前回までの記事に引き続き、今回も、鑑別機関をきちんと選ばないとどんなトラブルが起こりうるかを、鑑別書あるあるとして紹介していきます。

※このページは以下の記事の内容の一部を構成するものとなっています。

だまされた?!鑑別書あるある(実体験)

鑑別書に関して実際に遭遇したこと④:色に関する判断の相違(その2)

今回は、サファイアの中でも特に人気が高いパパラチャサファイアについての話題です。
ここでの実例は、前々回に紹介したケースとは異なり、知らずに購入して購入後にがっかりしたというタイプの話ではありません。
しかし、このブログを見てくださっている方々(特に、宝石にあまり詳しくない人)も遭遇しうるケースだとと思われるので、注意喚起を兼ねて紹介する次第です。

パパラチャサファイアとは?

サファイアと言えばブルーの石を想像しがちですが、サファイアには様々な色のバリエーションがあります。
中でもピンキッシュオレンジ~オレンジィピンクの色をしたサファイアは、パパラチャサファイアと呼ばれ、非常に人気があります。

事例紹介(1):鑑別書上はパパラチャではないサファイア

10年ほど前のことになりますが、中古品を扱うとあるお店で、サファイアが販売されていました。
色はオレンジとピンクの中間くらいの色で、いわゆるパパラチャサファイアと呼ばれる系統の色合いでした。
しかし、鑑別書(全国宝石学協会が発行したもの)の判定では、当該サファイアはパパラチャサファイアではなく、単なる「サファイア」とのことでした。
このサファイアは、石が深さがかなりあり(サファイアにはよくあるカット形状)、カラット数よりも見た目が小さい石でしたが、深さの分だけ色に深みがあり、輝きも透明度も非常に良い印象でした。

ピンクオレンジのサファイアの写真

本件のピンクオレンジのサファイア(写真は購入後に筆者が撮影したもの)。鑑別書ではパパラチャサファイアとは判定されていない。

事例紹介(2):鑑別書上はパパラチャであるサファイア

5年ほど前、インターネットでパパラチャサファイアのリングが販売されていました。
オレンジっぽさはあまり感じられず、どちらかというとピンクが強い印象ですが、このリングには中央宝石研究所の鑑別書が付いており、パパラチャサファイアとの判定がされていました。
この石も深さがかなりあるため、カラット数に比べて見た目が小さく見えましたが、写真で見る限りでは輝きや透明度は良さそうに思われました。

パパラチャサファイアのリングの写真

パパラチャサファイアのリング(写真は購入後に撮影したもの)。鑑別書でパパラチャサファイアの判定が出ている。

パパラチャサファイアの色・判断基準について

LMHC (Laboratory Manual Harmonisation Committee)という国際的な鑑別ルールを協議する委員会では、パパラチャサファイアについて以下のような定義をしています。

a subtle mixture of pinkish orange to orangey pink with pastel tones and low to medium saturations when viewed in standard daylight (LMHC Standardised Gemmological Report Wording (version 9; November 2018))

[(筆者による日本語訳)標準的なデイライト下において、淡めの明度で低い~中程度の彩度のピンキッシュオレンジ~オレンジィピンクが微妙に交じり合ったような色]

単にピンキッシュオレンジからオレンジィピンクであるということだけでなく、泡目の色合いで彩度が低め~中くらいとあるので、色がはっきりしていて鮮やかすぎる石はこの定義では除外されることになります。

上記はLMHCのパパラチャサファイアの定義ですが、すべての鑑別機関がこの定義に沿っているとは限りません。
パパラチャサファイアの定義は鑑別機関(または国や地域、業者)によっても異なる場合があるため、同一の石であっても鑑別機関によってパパラチャサファイアだと判定されることもあれば、されないこともあります。
海外の業者の人と話をすると、海外と日本ではパパラチャサファイアの判定基準が大きく異なるということをよく聞きますし、日本の鑑別機関は特に判断基準が厳しい(厳格というよりも、判定基準となるマスターストーンが少なすぎるので、本来パパラチャと呼ばれるべき石でもパパラチャではないと判定されることがある)という主張もちょくちょく耳にします(上記の事例(1)、事例(2)で出てきた全国宝石学協会(←すでに組織が無くなってしまいましたが)、中央宝石研究所とも、パパラチャの判定については厳格であるとされます(前者は特に))。
言い換えると、判断基準が緩い鑑別機関と厳しい鑑別機関が存在しうるということでもあります。
売り手側にとっては、パパラチャサファイアと名が付くと高値で売れることになるため、判断基準が緩い鑑別機関の鑑別書を積極的に使おうとするお店もあるという可能性を頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

鑑別書上の「パパラチャ」判定と実際の見た目上の美しさについて

さて、上記の事例(1)と事例(2)については、前者は鑑別書ではパパラチャと判定されなかった石、後者は鑑別書でパパラチャと判定された石ということになりますが、このページをご覧の皆さんはどちらが良い(好ましい)色だと感じられたでしょうか?
正直なところ、事例(2)の方の石はややピンクが強く感じられ、実物を見ても普通のピンクサファイアのように見えます。
綺麗ではありますが、あまりパパラチャサファイアという感じはしません。
むしろ、鑑別書ではパパラチャではない事例(1)の方が、ピンクとオレンジが混ざり合った感じで、いわゆるパパラチャサファイアっぽく見えます(光源の種類によっては、オレンジが強すぎる色に感じる場合もありますが)。
個人的な意見にはなりますが、どちらがいいかと言われたら、自分なら事例(1)の方がより好ましい色だなと思います。

鑑別書でパパラチャサファイアと判定されることと、石の美しさは必ずしも比例するわけではないので、パパラチャサファイアとは判定されなかった石がパパラチャサファイアと判定された石よりも美しさの観点で劣るとは限りません。
何に重きを置いて判断するかは人それぞれですが、筆者(ペットくん)の個人的な意見としては、鑑別書の色の表記にはあまりこだわらず、実物を目で見たときに魅力的な色に感じられるかどうかを基準に購入の判断をすることをお勧めします。
特に、事例(1)の石のように、色はきれいだが鑑別書でパパラチャと判定されなかった石は、安めに販売されることもあるので、そういった石を見つけることができたらお得に入手できるチャンスかもしれませんよ。

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