天然石に対する人為的処理:含浸

※この記事は以下の記事の内容の一部を構成するものとなっています。

天然石に対する人為的処理の種類と鑑別書での表記

含浸処理とは?

内部から表面に達している亀裂がある石や多孔質(微細な穴が開いていて液体が染み込みやすいタイプ)の石に対して、無色のオイルや樹脂等を染み込ませる処理を指します。
これによって石のヒビが見えにくくなることで透明度(とそれに伴って色)が良く見えるようになります。
対象となる石と屈折率と含浸素材の屈折率が近いほど、透明度の改善効果が高くなります。
石によって屈折率が異なるため、石の種類によって含浸する素材も異なってくることになります。
代表的な含浸処理としては、エメラルドへのオイル含浸やジェイダイト(ひすい)への無色樹脂の含浸、ルビー・サファイアへの鉛ガラスの含浸などがありますが、それ以外の石でも亀裂等がある石であれば含浸することが可能です。
ジェイダイト(ひすい)などでは、無色の樹脂のほか、色のついた樹脂を含浸して透明度と色を改善しているケースもよく見かけます。
それ以外のケースとして、染料を用いることにより、石の色を鮮やかに見せたり、全く別の色に変えてしまったりするような処理が行われることもありますが、これは「着色」という処理に分類され、「含浸」とは別扱いとされるようです。

含浸処理が行われた石は、含浸に使われた素材が徐々に劣化することにより、使用しているうちに見た目が変化する(見えなくなっていたヒビが見えるようになってきた、色が褪せてきたなど)ことがあります。
含浸処理が行われた石は、超音波洗浄をかけたり、化学薬品や熱にさらしたりすると劣化が激しくなるので注意が必要です。

鑑別書での開示コメント

検査の結果、含浸処理がされていることが判明した場合、鑑別書には「〇〇が行われています」というコメントが記載されます。
「〇〇」の部分には行われた含浸の方法が入ることになります。参考までに、代表的なものを表にまとめてみます。

代表的な含浸処理と鑑別書での開示コメントの例

AGL『各種宝石の表記およびコメント』(2020年11月20日改訂版)より

宝石名 含侵の方法 開示コメント
ルビー
サファイア
鉛ガラス 鉛ガラスの含浸処理が行われています。表示重量には鉛ガラスの含浸物質も含まれます。
エメラルド 無色のオイルまたは合成樹脂 無色透明剤の含浸が行われています。
ジェイダイト(ひすい) 無色の合成樹脂 無色樹脂の含浸処理が行われています。
ジェイダイト(ひすい) 有色の合成樹脂 有色樹脂の含浸処理が行われています。
トルコ石 無色剤 透明剤の含浸処理が行われています。
トルコ石 有色剤 有色剤の含浸処理が行われています。

含浸処理が石の市場価値に与える影響

含浸処理が石の価値に与える影響の程度は、石の種類によって異なります。
簡単に言ってしまうと、エメラルドの無色透明材の含浸以外は基本的にアウト(=価値が大きく下がってしまう)、という感じでしょうか。

エメラルドに関しては、もともと亀裂が多い宝石であり、無色のオイルの含浸が大昔から行われてきたという経緯があり、宝石業界では無色のオイルの含浸は伝統的に問題のない処理として許容されています。
無色樹脂(ポリマー、エポキシ樹脂など)の含浸についても、エメラルドに関しては現状許容されているようです。
したがって、無色透明材の含浸がされていても、それだけでエメラルドの価値が大きく下がるということはありません。
ただし、有色剤の含浸(エメラルドではあまり聞きませんが)だった場合は話は別で、価値は大きく下がるでしょう。

無色透明材の含浸が行われていないエメラルド(いわゆるノンオイルのエメラルド)のうち美しいものについては、希少性が高いということで高い評価が付きます。
ルビーやサファイアの非加熱・加熱の話と同様、単にノンオイルだというだけでは必ずしも評価が高いとは限りません。
ノンオイルのエメラルドは色が薄めだったりカットがあまりよくないなど見た目がそれほど良くない場合が大半なので、質が高くない場合はオイル含浸をされたエメラルドよりも評価が低くなる、なんてことも普通です。

【2022年5月24日追記】エメラルドの含浸処理について、もう少し詳しく説明するページを作ってみました。関心のある方はこちらもどうぞ。

エメラルドの含浸処理:国際基準(LMHC)と国内の宝石鑑別協議団体(AGL)の基準の比較

ヒスイに関しては、エメラルドの場合と違って樹脂の含浸がされていると価値が大きく下がります(特に、有色樹脂含浸のものは価値が無いに等しいです)。
めちゃくちゃきれいで大きいヒスイが驚くほど安い値段で売られている場合、大抵は有色樹脂が含浸されているもの(または、ヒスイではない模造石)だと考えていいでしょう。
見た目が非常にきれいではあるので、見た目重視で処理されていても気にならない人にとっては、良い選択肢になりうると思います。

ルビーやサファイアは値段が高めの石なので、大粒の石が大量に安く出回るということは通常あり得ません。
近年では大粒なのに安い値段のルビーが大量に出回るようになっていますが、これらは大抵はこの鉛ガラスが含浸されたタイプのものか、または天然ルビーではない石であるかのどちらかでしょう。
加熱処理の場合とは異なり、鉛ガラスの含浸がされたルビーやサファイアには宝石としての価値はほとんどありません。
が、言い方を変えると、この処理がされたものであれば大き目の石が安く手に入るということでもあるので、天然のルビーやサファイアが欲しいが高すぎて手が出せないという場合、鉛ガラスの含浸処理がされていることを理解したうえで購入するのはありかなと思います(天然であることには変わりありませんからね)。

トルコ石に関しては、残念ながらあまり詳しくないので何とも言えませんが、トルコ石は硬度が低いタイプの石になるので、含浸処理をすることで耐久性が増すというメリットもあり、一概に含浸処理が悪いとは言いきれない面があるようです。

含浸の程度の表示について

日本の(AGL基準の)鑑別機関の場合、エメラルドの含浸処理についてはされているかいないかの判断しかしてもらえませんが、海外の鑑別機関の場合、エメラルドの含浸の程度まで記載してくれるところがあります。

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