その石って「天然」?天然石と人為的処理

2つのサファイアの写真:どちらが無処理?

前回の記事では、天然石の購入にあたっては「本物」という言葉は売り手と買い手で認識が異なり、トラブルに発展しやすいので注意が必要だというお話をしました。

2つのサファイアの写真その石って「本物」?紛らわしい表記に注意!

皆さんが欲しいのが人工の石ではなく天然の石だったとして、この「天然」という言葉についても人によって認識の違いが生じやすいので気を付ける必要があります。
今回の記事では、現在市場で「天然」として流通している石と「人為的処理」について紹介します。また、筆者(ペットくん)の過去の経験に基づいて、石を購入する際に注意すべき点についても解説します。

「天然」の定義は人それぞれ

この記事を読んでいるほとんどの人が、「天然の石が欲しい、偽物はイヤ」と考えていると思います。
では、皆さんの考える「天然(石)」とはいったいどのようなものでしょうか?
実は、「天然」として一般に流通している石には様々なレベルのものがあって、石の業界的には「天然」とされているけれど、皆さんが想像する「天然」とは違う、というようなことが結構あります。
このことを認識したうえで天然石を買うようにしないと、「偽物だ(自分が思っていたものと違う)から返品したい vs. いや、それは天然の石で偽物じゃないので返品は受け付けません」みたいな感じで購入後にお店側とトラブルになる可能性もあるので、要注意です。
ここでポイントとなるのが、天然石に対して施される人為的処理の有無と程度です。

天然石に対する人為的処理

「天然石」として流通しているものには、以下に示すように何らかの形で人為的な処理が行われていることが一般的です。
人為的な処理といっても様々なものがあり、複数の処理が組み合わされていることも多く、どの程度の処理まで許容できるかは人によっても意見が分かれます。

以下に、天然石に対して行われている人為的処理をいくつか挙げてみます。
あなたにとって、天然石だと思える(天然ですと言われてその通りだなと納得できる)のは、どのタイプの石でしょうか?

天然の石に対する人為的処理の例
  1. 無処理(採掘された状態のまま。洗って土を落とす程度のことをしているくらい)
  2. 原石を研磨する(※研磨のみであれば、一般的には、これも無処理。ただし、原石コレクターにとっては人為的処理かも)
  3. 熱処理を施して人為的に色を変える
  4. 放射線処理を施して人為的に色を変える
  5. コーティングして人為的に色を付ける
  6. 樹脂や鉛ガラスを含侵して、ヒビや傷を目立たなくする
  7. その他、外観を変化させるための何らかの処理

誰が見ても確実に「天然」だと言えるのは1のタイプくらいで、それ以外のタイプについては、人によって意見が分かれるでしょう。
例えば、一般にジュエリー業界では2のように研磨のみを施した石は「無処理(純粋な天然)」として扱われますが、原石のコレクターにとっては、研磨してしまった石は純粋な「天然」とは言えない、というように、認識が食い違うこともあり得ます。
人為的処理をどこまで許容できるかは、その人の価値観次第のところがあるわけです。

皆さんにとって許容できるのは、1~7のうちどれだったでしょうか?恐らく、多くの人にとっては、1または2のタイプの石なら「これは天然石ですよ」と言われてもすんなり納得できるのではないかと思います。
一方で、3~7までの処理は意見が分かれそうです。もし、3~7の石は純粋な天然の石とは認められない!という価値観の人が、2のタイプの石を買ったつもりで、後で実はそれが3~7のタイプの石だと分かったら、その人にとっては「偽物」(天然ではあるかもしれないが、自分が求めているものではなかった)を掴まされたということになってしまいます。

なぜこのような話をするかというと、この人為的処理に対する認識の違いが、売り手と買い手との間でのトラブルにつながることがよくあるからです。
一般に出回っている石の多くは、見た目をよくするために何らかの人為的処理が施されていることが普通なので、お店側では1~7まで全部「天然石」として扱って、処理のことをいちいちお客に伝えることはしない(もしくは、お店側もそういった処理のことを知らずに売っている)ということがざらにあります。
処理がされているとしても、天然の石であることは事実なんだから「天然石」ですよ!という理屈ですね。
確かに、嘘は言っていないわけですし、買う側も何らかの処理がされていることを承知したうえで購入しているのであれば何の問題もないわけですが、特に石を初めて買う人の場合、純粋な(処理して色を変えたりしていない)天然の石を買ったつもりだったのに、後で着色された石だと知ってがっかり、みたいなことになりがちなので注意しましょう。

クイズ:どちらが無処理?

この記事冒頭の写真に写っていた2つの青い石はどちらも天然のサファイアですが、片方は無処理、もう片方は色の改善のための熱処理がされたものです。
左右どちらが無処理のサファイアでしょうか?

2つのサファイアの写真:どちらが無処理?

2つのサファイア、どちらが無処理?

答えは・・・

左側は無処理(研磨のみ)、右側は加熱処理がされたものでした。
上記の人為的処理の例1~7に当てはめて言うと、それぞれ2番と3番に該当する石ということになります。
ちなみに、左側のサファイアの産地はマダガスカル産、右側はスリランカ産です。

人為的処理の有無と石の「価値」

人為的処理の有無を把握することが重要なのは、同じ種類の石でも処理の有無によって価格帯が大きく違ってくることと、パワーストーン系の石に関しては処理によって石が本来持っているパワーが失われる(と言う専門家もいる)ということがあるからです(石の「パワー」については、また別の機会に書きたいと思います)。
純粋な天然の石が欲しい人にとっては、処理された石を買ってしまったら「失敗」でしかないわけなので、購入前によく確認をしておく必要があります(相場よりも明らかに安いなという場合、大抵は処理石だと思います)。
一方で、処理された石は、見た目の美しさが同程度であれば、無処理の石よりも格段に安い値段で購入できるので、もしあなたが「もとが天然の石でありさえすれば人為的処理がされていても全く気にしない!」という人であれば、あえて処理石を選ぶことで、少ない予算でより大きくてきれいな石を購入できるかもしれません。
繰り返しになりますが、自分が購入しようとしているものがどんなものなのかを把握し、自分の価値観にあったものであることを確認して納得したうえで購入することが大切だということです。

ちなみに、上記のような人為的処理が良くないと一概に言うことはできないことも覚えておきましょう。
処理の有無について情報開示されていて、かつ適正な価格で販売されてさえいれば、自分の価値観に応じて購入対象を選択することができるわけで、我々消費者にとっては商品の選択の幅が広がるというメリットが出てくるわけです(ただ、処理の有無についての情報開示がされていないとか、適正な価格設定がされていない場合もあるので問題なわけですが・・・)。

人為的処理の利点

まず、処理された石は、見た目の美しさが同程度の無処理の石に比べると格段に安い価格で入手することができます。
処理を全くしない状態でも透明で色もきれいな石というのはレアな存在なので、処理された石は認めないということになると、商品として供給できる量が減ってしまい、限られたお金持ちにしか買うことができない、といったことになってしまいます。
また、もろくて欠けやすい種類の石に関しては、処理によって耐久性が向上するという場合もあります。
我々が町中のストーンショップで様々な石を手ごろな値段で購入できるのは、こうした処理のおかげだとも言えます。

さて、多くの石には何らかの処理が行われていることが多いと書きましたが、石の種類によっても行われやすい処理のタイプは変わってきますし、処理ごとの市場価値への影響の度合いも様々です。
石の処理に関する詳細は、別の機会に詳しく紹介する予定です。

まとめ

今回は、天然石に対する人為的処理について紹介しました。
人為的処理をどこまで許容できるかは人によって見解が異なります。
後々のトラブルを防ぐためにも、自分が欲しいのはどんな石なのか(処理をどこまで許容できるのか)を把握し、お店の人にしっかりと確認したうえで購入するようにしましょう。

ポイント
  • 天然の石の中には、様々な人為的処理をされたものがある
  • 「天然」だから「無処理」とは限らない
  • 処理の有無によって、価格帯が大きく異なる場合がある
  • 処理された石がダメと見なすかどうかは人それぞれ。どの程度の処理までなら許容できるか、自分なりの基準を持っておくと良い

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