天然石に対する人為的処理:拡散

ピンクオレンジのサファイアの写真

※この記事は以下の記事の内容の一部を構成するものとなっています。

天然石に対する人為的処理の種類と鑑別書での表記

拡散処理

拡散処理は加熱処理の一種で、石の色を変化させたり、特殊な効果を持たせるために行われる処理を指します。
通常の加熱処理は、その石自体が持っている素質を加熱によって引き出すというニュアンスのものであるのに対し、拡散処理の場合は外部起源の(その石自体が持っているものではない)元素を宝石内部に浸透させることによって、通常の加熱では得られないような色に変化させるというものです。

拡散処理によって得られた色は恒久的なもので、通常の使用の範囲内では退色の恐れはないとされています。
ただし、拡散処理で得られた色は石の表層付近に集中して付いていることが多いため、石をリカット(研磨しなおすこと)する際に色が失われる可能性があります。

鑑別書での開示コメント

拡散処理が行われている石については、鑑別書で「外部からの元素の拡散加熱処理が行われています。」というコメントが記載されます。
「外縁部に沿った色の分布が認められます」というようなコメントが入ることもあります。

拡散処理はサファイアに行われていることが多いですが、最近ではアンデシン(フェルスパーの一種)などにも行われていることが知られています。
アンデシンへの拡散処理については、AGLの『各種宝石の表記およびコメント』を見ると「通常、拡散処理が行われています。」という開示コメントが記載されています。
「通常、」と付いているので、現時点ではアンデシンに関する拡散処理の有無の判断が困難ということのようですね。

ベリリウム拡散処理について

拡散処理の一つに、主にイエロー、オレンジ、ピンキッシュオレンジ~オレンジピンク(このページ冒頭に映っている石のような色)のサファイアに対して行われることのあるベリリウム拡散処理があります。通常の検査の範囲内ではベリリウム拡散処理が行われたどうかの確証が得られないときは、処理の有無を調べるために高度な分析装置を使った分析が必要になりますが、これは任意の追加検査になります。追加検査がされている場合といない場合とで、鑑別書の備考欄等に記載されるコメントが以下のように変わってきます。

  • 追加検査がされている場合
    「LA-ICP-MSにて拡散加熱処理の痕跡は認められません」や「LIBSにより確認」のようなコメントが入る(※LA-ICP-MSもLIBSも処理を看破するための分析方法の名称)
  • 追加検査がされていない場合
    「人為的な外部からの元素の拡散加熱処理に関する検査は行っておりません。明瞭な確証を得るためにはより高度な分析を要します。」や「拡散加熱処理に関してはより高度な分析を要します。」のようなコメントが入る

追加検査がされていない場合、拡散処理が行われている可能性を排除できないことになるので、サファイア(特に、暖色系のサファイア)を購入する場合、鑑別書の備考欄まで細かく確認するのが無難です。

拡散処理が石の市場価値に与える影響

拡散処理は、その石が本来持っていない外部元素を用いて色を変化させるもので、石の価値を大きく下げてしまうタイプの処理に当たります。
拡散処理がされることのある種類の石にはサファイアやアンデシン(フェルスパー)などがありますが、ペットくんはアンデシンについてはあまり詳しくないので、以下ではサファイアのことを述べることにします。

拡散処理は、サファイアに対する「ベリリウム拡散処理」が非常に(悪い意味で)有名です。
オレンジとピンクの中間の色相を持つサファイアはパパラチャサファイアと呼ばれており、非常に希少で人気があるのですが、2000年代の初め頃、ベリリウム拡散処理によってパパラチャ色にされたサファイアがその旨を開示しないまま大量に流通し、市場が混乱したことがありました。
その後、ベリリウム拡散処理がされたサファイアはゲテモノ(価値はほぼなし)扱いされるようになり、現在ではまともな店では扱われなくなりましたが、ネットオークションなどではこの手の石がパパラチャサファイアとして販売されているのを今でも見かけることがあります。
ベリリウム処理がされていることが明示されていて、買う側も知っていて買うなら問題ないのですが、売り手が素人でそうしたことを知らないとか、または知っていてあえてそれを隠して販売しているようなケースもあるかもしれません。
仮にきれいなパパラチャ色をしていたとしても、拡散処理されているサファイアには本来の価値はありませんので、購入を検討する際は必ず鑑別書で拡散処理の有無を確認しましょう。

その他、拡散処理によってアステリズム(スター)効果を持たせたスターサファイアも存在しますが、これも宝石としての価値は低いものです。スター効果が不自然なほどはっきりしているなど、本来のスターサファイアのスターの出方とはちょっと違って見えることが多いので、ある程度見慣れてくると鑑別書なしでも怪しいなと気づくことができると思います。

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