天然石に対する人為的処理:充填

無処理のルビーの写真

※この記事は以下の記事の内容の一部を構成するものとなっています。

天然石に対する人為的処理の種類と鑑別書での表記

充填処理

充填という言葉が示す通り、穴が開いている部分にものを詰めて塞ぐことを意味します。
宝石の処理としては、石の表面の穴や凹みを何らかの物質を用いて塞ぐことを指し、AGLの『各種宝石の表記およびコメント』の一覧によると、オパールやさんごに対して行われることのある処理のようです。

その他、ルビーやサファイアの加熱の際に用いた添加物が石の表面の穴をふさぐように残っている場合にも「充填」という言葉が使われます。
「充填」についてはAGLとGIAとで若干用語の使い方が異なるようで、AGLの定義では「含浸」とされる処理が、GIA(日本語ページ)の「宝石の処理について」(https://www.gia.edu/JP/gem-treatment)における説明では「充填」と呼ばれていたりします。
当サイトでは、とりあえずAGLの定義に沿って紹介しています。
(含浸処理については、以下のページを参照ください。)

天然石に対する人為的処理:含浸

鑑別書での開示コメント

オパールやさんごの充填処理については、それぞれ「充填処理が行われています。」や「充填物を認む。」といったコメントが付くようです。

ルビーやサファイアの加熱に伴う充填については、「加熱が行われています。」という文言と併記して「キャビティ中に透明物質の充填を認む。」という文言が記載されます。
純粋な充填処理に該当するのかどうか曖昧なところがありますが、加熱に伴い石の亀裂部分に残留物が生じている場合には「フラクチャーに透明物質を認む」という表記がされることもあります。
海外の鑑別書では、「Minor Residues」や「Moderate Residues」のように、残留物(residue)の程度に応じたコメントが付いているのも見かけます(このようなシステムを採っている鑑別書では、残留物に関するコメントがなければ加熱に伴う残留物がないことを意味します)。

充填処理が石の市場価値に与える影響

充填処理の石についてはあまり目にしたことがないので、正直言って石の価値にどの程度の影響があるかはよくわかりませんが、論理的に考えてある程度推測することはできます。
まず、オパールやさんごは無処理であることが前提で評価される石なので、充填された石の価値は、そうでない石よりも低くなるでしょう。

また、ルビーやサファイアの加熱に伴う充填や残留物に関して言うと、石に亀裂や傷が全くない状態であれば、加熱しても充填が生じることはそもそもないわけです。
逆に言うと、充填や残留物が生じているということは、そもそもの素材がそれほど良くないことを示唆すると考えられます。
従って、充填や残留物が生じていない石に比べると評価は相対的に低くなるでしょう。
ただし、例えばルビーに関していうと、「通常の加熱+軽度の残留物」であるルビーは、色やカット(輝き)次第ではそれなりに評価されており、鉛ガラスの含浸処理がされたルビーほど価値が低いわけでもないという印象です。

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