鑑別書の取得~結果の読み方:実例を交えて紹介します

クイズ:この青い石、何の石?

その石が天然であるかどうか、また、何らかの人為的処理がされているかどうかについては、鑑別書を取得すれば、専門家でなくても知ることができることを紹介してきました。

今回は、実例を交えながら、鑑別書を取得した際に特にしっかりと確認すべき点についてご紹介します。

まずはクイズ!

さて、このページ冒頭の写真の石ですが、これは何という石でしょうか?
全体に青い色が見えますが、部分的に水色や少し緑っぽい青も見えています。
石に詳しい人であれば、この時点である程度答えを絞り込めるかもしれませんが、それでも見た目だけで100%正解にたどり着くのは難しいでしょう。
そもそも、天然の石でないという可能性もあります。

このように、石の種類が分からない場合、鑑別機関に鑑別を依頼すれば良いのでしたね。
お店の人が代行してくれるのであればいいですが、常にしてもらえるとは限らないので、時には自分で鑑別書を取得しなければならないこともあるでしょう。
ということで、以下では自分で鑑別を依頼するところから、取得した鑑別書を読み解くところまでの流れを見ていきましょう。

自分自身で鑑別書を取得するまでの流れ

依頼する鑑別機関を決める

鑑別を依頼する場合、まずはどの鑑別機関に鑑別を依頼するかを決める必要があります。
国内外を含めて様々な鑑別機関があり、信頼度や料金体系など、様々な面で違いがあります。
石を郵送するのではなく、直接持ち込んで鑑別を依頼するのであれば、窓口が家の近くにあるかどうかも重要なポイントになってくるでしょう。
信頼してよいと思われる鑑別機関については、以下の記事が参考になるでしょう。

様々な種類の石、種類はどうやったら分かる?石の起源や処理の有無について知る手段:鑑別

鑑別を依頼する際は、ルース(裸石、ジュエリーなどにセットされていない石だけの状態)の状態で依頼するのが基本ですが、指輪やネックレスなど、セットされた状態の石でも受け付けてもらえます。
ただし、その場合は重量・サイズの計測や、一部の検査ができないなど、検査の正確性が若干下がる可能性があります。

今回の実例では、中央宝石研究所さんにお願いすることにしました(「さん」付けしていますが、特に個人的に何か関係があるというわけではありません。)。
中央宝石研究所さんは、AGL(宝石鑑別団体協議会)の会員であり、高度な分析をするための設備を備えているうえ、国際的なルール作りにも携わっているなど、日本国内では最も信頼できる鑑別機関の一つです。

鑑別機関に依頼する

依頼する鑑別機関を決めたら、石を直接持ち込むか、郵送します。
直接持ち込む場合、最近だと新型コロナの関係で営業日・時間が通常と異なっている場合があるので、各機関のホームページ等の情報を確認しましょう。
郵送する場合、鑑別機関によって手順が異なると思われるので、石を送る前に事前に問い合わせをしてから送るようにしましょう。

鑑別機関によっては、鑑別に関して複数の選択肢が用意されている場合があります。
たいていの場合、正式な鑑別書の他に、ソーティング(簡易鑑別)という選択肢があるはずで、ソーティングの方が少し料金が安くなります。
ソーティングの場合、正式な鑑別書よりも記載される事項が少ないですが、鑑別結果(天然かどうか、何という種類の石なのか)などの情報はちゃんと得られるので、費用を抑えたい場合はソーティングを依頼するのも手です。

料金の支払いの方法やタイミングは、鑑別機関によっても異なると思いますので、自分が依頼する鑑別機関に確認してみましょう。

今回の実例では、中央宝石研究所さんの博多支店に石を直接持ち込んで、鑑別を依頼しました。
その際、鑑別書(写真付きの正式なもの)にするか、ソーティング(簡易的な鑑別)にするかを尋ねられたので、写真付きの鑑別書の方を依頼してみました。

引換証を発行してもらえるので、それを受け取って結果が出るまでしばらく待つことになりました。

結果が出るまで待つ → 鑑別書を受け取る

鑑別に要する時間は、鑑別機関によって、また、石の種類によっても異なってきます(高度な検査が必要な石は、時間が長くかかる傾向があります)。
鑑別を依頼した時に所要日数を尋ねてみると、大体の目安を教えてもらえるはずです。
結果が出たら、鑑別を依頼した石とその鑑別書を受け取りに行きましょう(または郵送してもらいましょう)。

今回の実例では、1週間ほどで結果が出ました。

依頼時にもらった引換証を持参して支店の窓口に行き、料金(消費税等すべて含めて4,000円弱程度)を支払って石と鑑別書を受け取りました。

これで鑑別書の取得完了です!

鑑別書の内容を確認する

あとは鑑別書に記載された結果を見るだけです。
とは言っても、鑑別書には色々な項目があって、初めての人はどこをどう見たらいいのか分からないと思うので、以下で鑑別書のざっくりとした見方や必ずチェックすべきポイントを紹介していきます。

取得した鑑別書の写真です。

実例:取得した鑑別書の写真

実例:取得した鑑別書の写真

ソーティングの場合は?

鑑別書ではなくソーティングを依頼した場合は、小さめ(名刺くらいの大きさ)のカード状のものに結果が記載されます。通常は、詳細な情報は省略されますが、鑑別結果や処理の有無など最も知りたい部分の情報はきちんと記載されます。どの情報が省略されるかは鑑別機関によって異なります。例えば、中央宝石研究所のソーティングであれば、色やカットの形状、写真等は記載されませんが、石のサイズは記載されます。それに対して、ジェムリサーチジャパンのソーティングでは、石のサイズは記載されない代わりに写真が掲載されるなど、若干の違いがあります(以下の写真参照)。

2つのソーティングの写真

中央宝石研究所のソーティング(左)とジェムリサーチジャパンのソーティング(右)。鑑別機関によって、ソーティングに記載される項目が若干異なることが分かる。

鑑別書の記載項目

鑑別機関によって鑑別書に記載される内容や記載項目は若干異なりますが、どのような鑑別書であっても、鑑別結果や石の外観に関する情報が掲載されているはずです。
ここでは、例として中央宝石研究所さんの鑑別書に記載される項目を挙げてみます。

  • 鑑別結果
    ・鉱物名
    ・宝石名
    ・人為的処理に関するコメント
  • 外観
    ・透明度と色
    ・カットの形式
    ・重量
    ・寸法
  • 検査項目
    ・屈折率
    ・偏光性
    ・多色性
    ・蛍光性
    ・比重
    ・分光性
    ・拡大検査
  • 備考
  • 鑑別した石の写真と鑑別書No.
  • 鑑別書の発行日

海外の鑑別機関(GIAやGRSなど)の鑑別書では、細かい検査項目は記載されませんが、記載されていないだけで検査はされているはずです。
鑑別機関によっては、その石の産地に関する見解を記載してくれる場合もあります。

必ずチェックしておきたい項目

鑑別書を見る際、最低でも以下の点は確認するようにしましょう。

天然であるかどうかの確認

天然の石であれば、鉱物名(または宝石名)の冒頭部分に、「天然〇〇」のように「天然」という記載がされます。
まずはここを確認しましょう。

記載例
  • 鉱物名:天然コランダム 宝石名:ルビー(※鉱物名の方に「天然」が付いていれば、宝石名の方についていなくても問題なし)
  • 鉱物名:天然コランダム 宝石名:サファイア
  • 鉱物名:天然ベリル 宝石名:アクワマリン

石の種類の確認

石が天然であることを確認するだけでは不十分なので、それに加えて石の種類も確認しましょう。
具体的には、「宝石名」の欄に記載された名称を見て、自分が求めている種類の石であるかどうかを見ればOKです。

人為的処理の有無の確認

その石について、何らかの処理がされていることが看破された場合には、その処理について開示コメントが記載がされます(コメントが何も書いていなければ、処理がされている痕跡は特に見つからなかったということになります)。
鑑別書のどの部分に処理の内容が記載するかは鑑別機関によっても異なりますが、たいていの場合、分かりやすい位置にコメントが記載されているはずです。
現時点では処理の有無について明言できない場合には、「通常、〇〇がされています」といったコメントが入ることもあります。
天然石に対して行われる処理と、それに関して記載される具体的な開示コメントについては、下記の記事をご参照ください。

天然石に対する人為的処理の種類と鑑別書での表記

人為的処理がされている場合、処理をどこまで許容するかは人それぞれ価値観が異なるので、自分が許せる範囲の処理であるかを確認しておきましょう。

実例として取得した鑑別書には、以下のように記載されていました。
ここから、写真の青い石は天然の「トルマリン」という鉱物で、宝石名は「ブルートルマリン」であることが分かりました。
宝石名の下に、「通常、加熱が行われています。」という開示コメントが記載されています。
これは、ブルーのトルマリンには一般的に加熱が行われていることが多いが、加熱の有無については判断できないということを示しています。

鑑別結果:鉱物名と宝石名の記載例

取得した鑑別書に記載されていた鉱物名と宝石名

石の外観的特徴や写真の確認

自分で鑑別書を取得した場合はあまり気にする必要はありませんが、購入時に鑑別書が付いている場合は、自分が購入しようとしている石と、鑑別書に掲載されている(鑑別が行われた)石が同一のものであるかも確認しましょう。
たくさんの石を扱っているお店では、ついうっかりして石と鑑別書を取り違えてしまうこともあるかもしれません。
鑑別書にはたいてい写真が掲載されているので、実物と比べて明らかに形状が異なる場合や、記載されているサイズや重量がお店側から提供された内容と異なっている場合、何らかの間違いがあった可能性が高いです。

実例として取得した鑑別書には、以下のように記載されていました。
石の種類によっては、色が何色だと判定されるかによって価値に影響する場合があるので、慣れてきたら色に関する記載にも注意を払うようにすると良いでしょう。

鑑別書での外観に関する記載の例

取得した鑑別書に記載されていた外観に関する情報

ペットくんの以前に経験したこととして、ネットオークションでサファイア(鑑別書付き)を購入した際、鑑別書に映っている石と送られてきた石が違っていたことがあります。
鑑別書の写真の石はやや細めのオーバル(小判型)の形状だったのに対して、実物の石はそれよりもラウンドに近いオーバルの形状で、サイズもやや違っていたので、恐らく取り違えたのだろうと推察して出品者に問い合わせました。
その時は、返金してもらえたうえに、石は気に入ってもらえたのならそのまま差し上げますと言ってくれたので、結果的にタダでその石をもらえてしまいました。
よくあることではないと思いますが、こういうことも起こりうるということで、一応鑑別書の石と実物が同じものであるかどうかを確認しておくと良いでしょう。

補足

お店の商品説明では2.1 ct(ct = カラット、1カラットは0.2グラム)と記載されていたのに、鑑別書では2.098 ctと表示されているとか、サイズが8.3mm × 6.5mmと言われていたのに、鑑別書には8.28mm × 6.52mmとなっている、といったような、重量やサイズの多少の違いについては誤差の範囲内ということで気にしなくていい場合が多いです(同一の石を複数の鑑別機関に鑑別してもらったとき、サイズが小数点以下まで完全に一致はしないということはよくある話です)。

写真については、照明や撮影された角度によっては色や形状が多少違って見えたりすることもあります。心配な場合、鑑別機関によっては、同一性の確認(鑑別書に記載されている石と、実物の石が同じものであるかどうかの確認)をしてくれるところもあります。ペットくんの実体験として、あるお店で購入した石に中央宝石研究所さんの鑑別書が付いてはいたものの、鑑別書に載っている石が実物の石と同じものかどうかが不安だったので、中央宝石研究所さんにその鑑別書と石を持ち込んでお願いしたら、確認をしてもらうことができました(これは2019年時点での話ですが、恐らく今でもやってもらえるはずです)。

その他

必須とまではいわないものの、見ておくことをお勧めしたい項目がいくつかあります。

備考欄

備考欄に特殊なコメントが記載される場合があります。
一部の宝石種については、特定の条件を満たした場合に特殊な呼称が認められる場合があります。
条件を満たした場合、「別名〇〇と呼ばれています。」というようなコメントが入ります。

実例として取得した鑑別書には、「別名インディゴライトと呼ばれています。」という記載がされていました。
冒頭の写真の青い石はブルートルマリンですが、この石はブルートルマリンの中でも特に「インディゴライト」と呼ばれる色相を有しているということになります。

鑑別書の備考欄の記載の例

取得した鑑別書の備考欄の記載

特殊な呼称が付く石の場合、そうでない石よりも評価が高くなる傾向にあるので、慣れてきたらこうした部分にも目を向けてみると良いでしょう。

備考欄に記載される特殊な呼称の例
  • トルマリンのうち、濃青色をしたもの・・・インディゴライト
  • トパーズのうち、分子構造に水酸基(OH)を含むタイプのもの・・・インペリアルトパーズ
  • サファイアのうち、ピンク~オレンジの中間色のもの・・・パパラチャサファイア
  • グロッシュラーガーネットのうち、緑色のもの・・・ツァボライト

このほか、ルビーやサファイアなどでは、色によってはビジョンブラッドやロイヤルブルーといった呼称が付くこともあります。
こうした記載は海外の鑑別機関では以前から行われていましたが、国内の(AGL会員の)鑑別機関では行われてきませんでした(鑑別書におけるそうした表記を禁ずるAGLのルールによるものです)。
ただし、AGLのルールが最近変更され、2021年の3月1日からはAGL会員の鑑別機関でも備考欄等にピジョンブラッドやロイヤルブルーといった表記ができるようになりました。
(中央宝石研究所のホームページでも、2021年2月24日付でそうした表記に関する案内が出ています。)

鑑別書の発行日

鑑別書には、発行日が記載されます(かなり古いものについては、記載されていないことも多いです)。
ある程度古い鑑別書の場合、現行のものとは異なるルールで鑑別が行われている場合があり、鑑別を取り直したら結果が変わってくる可能性もあります。
一方、古いものが絶対的に悪いというわけでもなく、例えば、ある処理が2010年頃からされるようになったという場合、2005年頃の鑑別書があれば、少なくともその処理は行われていなさそうだと推測できるというような感じで、かえって安心材料になる可能性もあります。

日付の表示については、鑑別機関によって年・月・日の順番が異なるので間違わないように気を付けましょう。
例えば、中央宝石研究所の鑑別書の場合は右下の方に数字で月・日・年の順で記載されます。
061020のような記載であれば、これは2020年6月10日発行ということになります(※年・月・日の順ではないのでちょっと紛らわしいですね)。

実例として取得した鑑別書の日付の記載は、082520となっています。

中央宝石研究所の鑑別書の場合、月・日・年の順で記載されているので、2020年8月25日に発行されたものであることが分かります。

鑑別書の日付の記載例

取得した鑑別書の日付の記載

中央宝石研究所の鑑別書の日付の記載について

確認のため、中央宝石研究所さんのホームページにある鑑別書のサンプルを見てみたところ、日付が190118のように付いていました(2021年4月13日現在)。
月・日・年の順番だと、2018年19月1日となってしまい、明らかにおかしいわけですが、もしかするとどこかのタイミングで表記の順番が変わったのかもしれません。
ペットくんの手持ちの鑑別書を確認したところでは、少なくとも2020年8月31日までは月・日・年の順で表記がされているということで間違いないので、変更されたとしたらその後でしょうかね。

産地

鑑別機関によっては、ルビーやサファイア、エメラルド等の一部の宝石について、その石の産地に関する見解を記載してくれるところがあります。
(日本の鑑別機関(AGL会員)の場合、鑑別書には産地の情報を記載してもらうことはできませんが、別途依頼すれば分析報告書という形で産地に関する見解を出してもらうことができます。)
ルビーならミャンマーのモゴク産、サファイアならカシミール産、エメラルドならコロンビア産、といったように、特定の産地のものは他の産地よりもより高く評価されるので、鑑別機関が出してくれる見解は石の価格にも大きく影響してきます。
ただし、産地に関する記載はあくまでその鑑別機関の現時点での見解という位置づけに当たるため、必ずしも絶対的なものではないことを覚えておきましょう。
また、有名な産地のものであっても、石の色や大きさ、透明度やカットによっては高い評価にはならない場合もあるので、その点にも注意が必要です。

まとめ

鑑別書の取得までの流れと、取得した鑑別書の見方を実例を交えて紹介してきました。
最後に、今回の内容を簡単にまとめてみましょう。

鑑別書を見る際に必ずチェックしておきたいポイント
  • 天然であるかどうか、また、石の種類が何であるかを、鉱物名・宝石名の欄で確認する
  • 人為的処理の有無を、開示コメントや備考欄で確認する
  • (必要に応じて)鑑別書に記載された石が実物の石と一致するかどうかを確かめるため、写真や外観的特徴欄を確認する

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