天然石の価値とは?

オレンジヒスイの彫刻の写真

天然石の価値というと、ダイヤモンドやルビー等の高価で希少な宝石とその財産的価値のような話が思い浮かびがちですが、天然石にはそうした金銭的な価値以外にも、工業用部品や装飾品としての実用的な価値、幸運や神秘的な力、権力の象徴としての価値(文化的または精神的価値としておきます)などがあります。
天然石に対して自分がどのような価値を求めているのかによって、購入時に留意すべき点は変わってきます。
人によって様々な意見はあるでしょうが、福岡パワーストーン愛好会(仮)のメンバーにアドバイスするという想定で、筆者(ペットくん)なりの考えを書いてみます。

天然石の特徴は?

天然石に限らず、世の中にあるものには何らかの機能的な価値を持っていて、需要や供給量に応じて金銭的価値が付きます。
例えば、生鮮食品であれば「用途=食べること、耐久性=日持ちせず、一度食べたらそれで終わり」といった特徴があり、家電製品であれば「用途=生活を楽にしてくれる(生活必需品となっているものも多い);耐久性=いつかは壊れるが、ある程度の期間繰り返し使うことを想定」というような特徴があります。
このような感じで天然石について考えてみたとき、天然石の特徴(として我々が期待するもの)は、耐久性と希少性が非常に高いことと用途が意外に広いことが挙げられるでしょう。

特に、神秘的な力の象徴や畏敬の対象になるという点は他のものにはなかなかない天然石固有の特徴ではないかと思います。
ところで、野菜や果物の成長の過程といった自然現象にも様々な神秘的な要素が含まれていますし、家電製品だって凄まじいパワーを秘めた人類の叡智の結晶だと見なすこともできますが、これらがそのような視点から扱われることは滅多にありません。
一方、天然石は、世界のいたるところでご神体として崇められていたり、伝説と結びつけられていたりと、様々な文化・社会で神秘的な力の象徴や畏敬の対象として扱われ、科学が発達した現代においてさえも、幸運を呼ぶアイテム的な何らかの特別な力を持つ象徴として見なす人が一定数存在します。

このように、天然石は他のものと比べて結構特殊な一面を持っているわけですが、おそらくこれは天然石の耐久性と関係があるのでしょう。
固くて丈夫な石は、大昔の人にとっては不滅の存在の化身みたいに思えたかもしれないし、中でもきれいな色をした石は自然界のパワーが結晶したもの(赤い石なら火の力の結晶、みたいに)として捉えたとしても不思議ではありません。
そんな偉大な力を常に身にまとっていたいと考える人が出てきて、装飾品としての用途が生まれてくるのも自然なことだと思われます。
しかも希少な存在とくればみんなが欲しがるのは当然で、結果的に財産的な価値も発生してきた、・・・みたいな経緯があって、天然石がかなり幅広い用途を持つようになったのかなと考えたりします。

まあそうした経緯に関する推測は置いておくとして、耐久性と希少性というのは天然石の価値を考えるうえで重要なポイントになっています。
また、これまでに何度も紹介してきた石に対する人為的処理の有無は、石の耐久性や希少性に密接にかかわるため、これも天然石の価値を考えるうえで外すことはできません。
以上のような観点に基づき、天然石の価値に影響する要因について順に紹介していきます。

金銭的・財産的な価値

一部の天然石は、不動産、金・プラチナ等と同じように実物資産として投資の対象になり得ます。
実際、国際的なオークション結果を見ていると、宝石が過去最高値を更新し続けていたりもしています。
そうした国際的オークションでは、50年とか100年とか、場合によってはそれ以上前の宝石が出品されたりということもザラで、天然石に耐久性と財産的価値があることを見せつけてくれます。

ところで、天然石は希少なものなので、珍しい石ほど価値(価格)が高くなると思われがち(そして、一般論としてはそれは正しい)ですが、天然石の価格には需要の多さも大きく関わってきます。
実はわりとありふれた種類の石であっても、欲しがる人が多ければ値段は高くなりうるし、逆に、極めて珍しいタイプの石であっても、知名度が低くて欲しがる人は一部のマニアくらいという場合だと、値段が高くなるとは限りません。
そういう観点からは、希少でかつ知名度の高い石を選択しておくと、価値が落ちにくいということが言えるでしょう。

石の種類のほか、石に対する人為的処理の有無も需要と供給に影響を及ぼすため、財産的な価値に関して重要な要因となります。
高品質で見た目が全く同じ人為的処理がされた石と無処理の石があった場合、無処理の石は人為的処理がされている石に比べて数が少なく、一般的に無処理の石の方が好まれやすいので、無処理の石の方が価値が高くなるのが普通です。
処理にも様々なものがあり、価値にそれほど影響しない処理(例:ヒスイに対するワックス処理)と、価値を大幅に下げる処理(例:ヒスイに対する樹脂含浸、サファイアに対するベリリウム拡散処理)があるので、財産的な面を重視する場合は後者のタイプの処理がされた石を選ばないように注意が必要です。
また、処理の有無については鑑別書を取得するとある程度分かりますが、石の種類によっては処理の有無が判断できない場合があるなど、鑑別にも限界はあるので、その点にも注意が必要でしょう。

鑑別の限界や様々な人為的処理についてはこちらの記事で紹介しています

また、天然石に関しては特定の産地から採れる石が非常に美しく希少性があり、他の産地のものに比べて人気があるみたいなことがよくあります。
つまり、天然石の世界では産地は需要と供給に関連するもので、結果的に価格に影響する要因の一つとなります。
産地の影響は、超高品質な石になるほど大きく表れてきますが、そういう石は一般人には手が届かないほど高額になってしまうので、普通は品質か産地のどちらかを諦めることになると思います。
我々のような一般人がそこそこのものを購入するという前提で言えば、超有名な産地のものだが品質が悪いものよりも、産地がマイナーでも品質が高いものを購入した方が割安で購入でき、見て楽しむこともできるので総合的な満足度が高くなると思います。
産地に関して注意すべきなのは、鑑別書に記載されている石の産地の情報は、あくまでその鑑別書発行時点でその鑑別機関が持っている石のサンプルやデータベースの情報に基づいて判断したものだという点です。
鑑別機関によって産地の判断が変わったり、同一の鑑別機関でもデータベースが更新されることによって何十年後かには判断基準が変わってしまうこともあり得ます。
どうしても産地にこだわりたい場合、こうした産地の鑑別に関する不確定要素があることや、買うときには割高で、売るときには高い評価が得られない可能性が高い(特に、急いで換金したい場合は値段を下げないといけなくなる場合が多い)ことなど、様々なリスクを想定した上で購入することをお勧めします。

天然石を資産として長期的に保有するのであれば、耐久性も重要な要素です。
購入して数年で色が抜けてしまったり、割れてしまったりしては意味がありませんからね。
硬度はモース硬度7以上あると望ましい(空気中の塵に含まれる石英が硬度7で、それよりも硬度が低いと表面が摩耗していってしまいやすいので)と言われますが、それ以外にも靭性が低すぎないこと、容易に退色しないこと、といった条件を満たしていればいるほど望ましいでしょう。
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、アレキサンドライトなど、伝統的に高く評価されている石はこうした条件を満たしていることが多い印象ですが、比較的新しく出てきた石の中には硬度が低めで耐久性が高くないようなものもあります。
耐久性が低い石がダメだということではないですが、そういった石を購入する場合、石の特徴をよく知ったうえで取り扱いに注意する必要が出てきます。

人為的処理がされている石の場合、処理の種類によって永続性が異なり、例えば、ルビーやサファイアに行われる加熱処理によって得られた色は永続的(退色しない)とされますが、石の表面を色素で着色したような石の場合は色が徐々に落ちてしまうというようなことが起こり得ます。
なお、処理の永続性については価格にある程度反映されているように思います。
(上に挙げたルビーやサファイアの加熱処理は昔からされている伝統的な処理で、しかも加熱による色が永続的と言うことで許容されやすく、金銭的価値にそこまで大きく影響を及ぼさないのに対し、着色処理された石は好まれないうえに色の永続性にも懸念があるので需要が低くなり、価値が大きく下がります。)

以上、財産的な面を考えるうえで色々と考慮すべき要因を挙げてきました。
一言で言ってしまうと、石の金銭的価値は需要と供給のバランスで決まってくるということと、石の知名度や処理の有無、産地などは需要や供給に関係するので、金銭的価値を考えるうえで重要な要因になり得るということです。

石の産出動向や需要の程度など、将来的にどうなるかがはっきり読めない要因もありますが、耐久性等は購入前にしっかりと検討しておくことで失敗するリスクを下げることができます。
ただし、我々のような一般人に手が届く範囲の石で言うならば、買ったときと同じかそれよりも高く売れることは滅多にないので(品質の見極めができる人が中古品の転売をやればそういうこともあり得ますが)、短期で儲けようと思って購入するのはやめておく方が無難です。
長期で見ると値上がりしていくということはあり得るので、自分がとても気に入った石を何十年か持って楽しんで、そのうえで手放す際に買ったときの何分の一かで売れればOKみたいな感じで、石自体が大好きで財産的な価値はおまけ程度のものと考えるくらいでちょうどいいでしょう。
天然石には財産的な価値以外にも、以下に述べるように様々な価値があるので、自分なりに重視する点を押さえつつ納得できるものを購入し、その石とともに楽しむことが結局のところ最も後悔せずに済む方法となるでしょう。

機能的な価値

天然石は様々な実用的用途に用いることができます。
有名なところでは、クォーツは水晶発振子として時計や通信機器等に活用されていますし、世界で最初のレーザー装置は媒質としてルビーが使われたとされています。
ただし、こうした工業用途で用いるためには不純物が少なく品質にむらが少ないことが重要となるので、この点で天然石よりも合成石の方が向いていますし、そもそも一般の人がこういった用途で天然石を購入しようというケースはほぼないと思うので、ここではこういった用途の話は避けることにします。

天然石の実用的な用途として一般的なのは、装飾品として身に着ける(もしくは置物として飾る)といったことだろうと思います。
装飾品として用いる場合、購入当初の見た目を長く保つことができないと身に着けることができなくなってしまうので、その石の耐久性について検討することが重要です。
特に指輪やブレスレットのように体の軸から遠目の場所に身に着けるタイプの装飾品については、色々とぶつけて衝撃を受ける可能性が高くなるので、丈夫でない石の場合には表面が傷だらけになったり、欠けたり割れたりしてしまいやすくなります。
また、永続性のない処理で色が付けられた石(例:着色処理された石)の場合、身に着けているうちに色が抜けてきてしまったみたいなことも起こりうるでしょう。
置物として置いておく分にはそれほど耐久性について気にしなくていいかもしれませんが、紫外線で退色するタイプの石は太陽光が当たる場所に置かないようにするなど、やはりそれなりの配慮が必要です。

身に着けるのとは少し違いますが、特にパワーストーン系の石については「浄化」として水晶のクラスターの上に置いたり吊るしたりすることもあります。
パワーストーン業界は、そもそも販売する側があまり耐久性のことを気にしていないことが多く、ブレスレットに硬度の低い石がいっぱい入っていたりするので、クラスターに置く際にも気を付けないと知らず知らずのうちに細かい傷がついてしまうみたいなこともありそうです。
(そもそも、ブレスレットは隣り合った石同士が常に擦れる+手に着けるので色々なところにぶつかりやすいので、柔らかい石は向かないと思いますが、パワーストーン系のお店だと、すぐに壊れたり劣化することを前提にして販売しているケースもよくあるようです。「占星術的観点から今年の運気を上げることに特化したブレスレットなので、年が変わったら買い替えましょう」とか、「石の色が抜けたり割れたりするのは石があなたの悪い運気を吸い取ってくれたからです!」みたいな話を聞くと、商売上手だなとは思いますが、筆者自身は石を消耗品扱いすることに抵抗感があります。)

一般的に、耐久性の高い石は高価で、耐久性の低い石は安価である傾向があります(装飾用途としては、耐久性が高い方が望ましく、需要が高くなるでしょうからこれは自然なことです)。
100万円するけど100年使えるものと、1万円で買えるけど1年で寿命が来てしまうものだと、年あたりの費用は一緒ということになる(しかも、100万円の方は100年後に売ればある程度のお金にはなる可能性がある)わけで、耐久性込みで考えないと意外に高い買い物になってしまう可能性もあります。
天然石の装飾品を消耗品的なものとして割り切って(壊れたら買い替えればいいや的な感じで)身に着けている人や、石の色が抜けたり割れたりすることを私の悪運を石が身代わりになって吸ってくれたみたいにポジティブに受け止められる人以外は、石の耐久性についても注意を払うことをお勧めします。

ちなみに、このページ冒頭の写真は筆者が15年以上前に購入したものです。
筆者の場合、外から見えないように服の下に身に着けているので装飾品というよりはお守りのような感じ使っていますが、外すのは風呂に入るときと病院でレントゲンを撮るときくらいで、寝るときも含めてずっと身に着けているものです。
紐は劣化するので数年に一度交換が必要ですが、石自体は購入時から全く変化することなく、このままいくと自分が老人になっても同じ状態を保ち続けるのだろうな、という感じです。
こんな風にいつまでも長く使い続けることができることが、天然石の装飾品の大きな魅力の一つだと思います。

オレンジヒスイの彫刻の写真

15年以上前に購入したオレンジ色のヒスイ。ほぼ毎日身に着けていても、まったく劣化する気配なし。

文化的・精神的な価値

科学が発達した現代ではあまり重要視されませんが、天然石には神秘的な力の象徴としての価値を持つという側面があります。
パワーストーンのようにそうした価値を前面に押し出して販売されているようなものもありますが、「この石を持つと〇〇運が上がる」みたいな普通に考えれば明らかに胡散臭い売り文句が付いていても、天然石だとなんとなく信じられるような気分になるのも、人類の歴史の中で我々の意識に刷り込まれた「天然石=神秘的な力の象徴」という概念のなせる業なのかもしれません。

石の神秘的な力が・・・みたいな話は、非科学的だからけしからん!みたいに拒絶反応を示す人もいるかもしれませんが、そういう非科学的な話は天然石に限ったことはなく、節分で鬼を追い出すために豆をまくとか、子供の成長や健康を願って端午の節句に鯉のぼりをあげて菖蒲湯に入って柏餅やちまきを食べる、みたいな風習の中にもよく見られることで、非科学的だから直ちに排除すべきだということにはなりません。(むしろ、こうした風習は現代社会においてもしっかりと文化・社会に根付いていますよね。)
節分のときに本気で鬼が存在すると信じて豆をまいている人はほとんどいないわけで、天然石に関する言い伝えについても、そういう言い伝えがあるから幸運を得るためのおまじない的に持ってみようという感じで、エンタメ的に楽しむ分にはまったく問題ないでしょう。
問題になり得ることは、中には「これを持たないと不幸になる」みたいに恐怖心をあおって購入させようとするような人も一定数いるということで、そうした輩に引っかからないよう注意しておくことは大切です。

ちなみに、上で紹介したヒスイのペンダントですが、表面には龍が、裏面には「永保平安」という漢字が彫られていて、ヒスイ自体にもいろいろな意味がありますが、彫られたモチーフ的にも縁起がいい構成になっています。
こんな風にお守り・おまじない的な要素も持たせることができるのが天然石の良いところだと思います。

オレンジヒスイの彫刻の写真

ページ冒頭のヒスイの裏面の写真。裏面は縁起を担いで漢字が彫られている。

なお、パワーストーンには本当に効果があるのか?みたいな議論がされることがありますが、それに関して言うと筆者は「効果がある」と考えています。
ただ、多くの人が考えているような直接的な形での効果とは異なるタイプの効果だという考えです。
このあたりの話は長くなるので、また別の機会に書いてみたいと思っています。

パワーストーン系の石に関しては、どの種類の石にどのような効果があるのか、みたいなことがよく議論されるのですが、「パワーストーン研究家」とか「有名なヒーラー」とか呼ばれる人たちが好き勝手なことを言っていて、とても面白い世界が形成されています。
また、パワーストーン業界でも石の人為的処理のことが話題になることがあり、「人為的処理を受けた石は本来のパワーが歪められている」みたいな議論がされたりもします。
似たような話で、「合成石にパワーはあるか?」みたいな議論も見かけます。
こうしたテーマに関する議論を追っていくと、パワーストーン業界のいい加減さ(よく言えば「極めて高い柔軟性」)が見えてきて、大変楽しめます。
こういった話も、別の機会にまとめてみたいと考えています。

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